Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
そして、今。私は課長と向かい合って座っている。


少し話さないか、そう誘われて肯いた私を課長は、会社から何駅か離れたところにあるカフェに連れて来てくれた。


「ここなら、会社の連中にも見つからないだろう。」


華やかな雰囲気のハナキンの夜、そう言って課長は笑った。


「ここは結構食事のメニューも充実してる。パスタも美味いぞ。」


「はい。でも課長はそんなんじゃ、物足りないんじゃありませんか?」


「いや、石原と2人なんで、結構胸いっぱいだから・・・そんなにガッツリ食べられん。」


「何言ってるんですか?からかわないで下さい。」


「からかってるわけないだろ。初デートなんだ、緊張しない方がおかしい。」


真面目な顔で、そんなことを言われてしまった。


「課長・・・。」


課長が緊張してるなら、私はもっと緊張してる。私がそんな思いで、課長を見ると


「なぁ、こんな時まで『課長』は勘弁してくれよ。」


と苦笑いされる。


「そ、そうですよね。すみません。」


慌てて頭を下げたけど、ということは「小笠原さん」って呼ぶことになるのかな?それもちょっと気恥ずかしいな・・・。
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