Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
そして迎えた土曜日。


待ち合わせ場所に現れた小笠原さんは、もちろんいつものビジネススーツではなく、その洗練された姿は、彼のイケメン度を、否が応でも引き立たせている。


(この人の横に私って・・・似合わな過ぎでしょ。)


自分ではもちろん、道行く人にも、きっとそう思われてるなと、気後れしている私に


「お前、反則だろ。」


「えっ?」


ポツンと聞こえていた彼の言葉に、私が振り向くと


「可愛すぎる。」


と言って、満面の笑みをくれる。


「か、からかわないで下さい。」


思わずそう言って俯く私に


「行こう。」


と言うと、私の右手を取って歩き出す。


えっ、手を繋がれてる。私の動揺は一段と激しくなって、顔が真っ赤になってるのが自分でもわかる。恥ずかしかったけど、でも全く嫌ではなかった。


映画館の前に着くと、既にチケットは用意されている。たぶんそうだろうと予期していた私は


「ありがとうございます。」


と受け取った後


「これ、お願いします。」


と彼に封筒を差し出した。


中を確認した小笠原さんは


「堅い奴だな。」


と苦笑いしながら


「でも俺の分は、まさか受け取れんよ。」


と言うと、スッとお渡ししたチケット代の半分を私に戻す。


「でも・・・。」


「行くぞ。」


戸惑う私に構わず、また私の手を取ると、小笠原さんは中に入って行く。


(チケット代くらいは出させて欲しかったのにな・・・。)


申し訳ない気持ちだった。
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