Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
あれ以来、課長は昼休みは必ず石原を誘うようになった。石原も嫌そうではなかったけど、内田達とは、全く一緒に食べられなくなって、ちょっと困惑してる気配がある。


一方、俺に対しては、どんな態度で出て来るのか、ちょっと身構えてたんだが、今のところは、特に何もない。


もともと俺には厳しかったが、それは業務上のことで、俺が単なるダメ社員だというだけの話。それに、あんまり変なことをしてくれば、今のご時世、こっちだって黙ってはいない。


せっかく乗ったエリートコースを女欲しさに、みすみす棒に振るほど、バカじゃないとは思うけどな。


だいたい俺は課長と石原を争う気なんてサラサラない。


なんで石原と課長が付き合ってるのが、わかったかって?すぐに分かったよ、石原の様子見てりゃ。一所懸命、普通にしようとしてたけど、課長を見るアイツの視線が、ある時から、変わったからな。あぁ、そういうことかって、すぐにピンと来たよ。


なんでかって?そりゃ石原が好きだからさ。俺は、石原のことが中2で出会ったあの時から、ずっと好きなんだ。


でもコミュ障の俺に言えるわけもなく、翔真の件でアイツを誤解してたこともある。それでもこの会社で再会した時は心踊ったし、アイツからコクられた時は、驚いたけど、嬉しかったよ。


でも、心は動かなかった。それは俺じゃ、アイツを幸せに出来ないから。卑屈になってるわけじゃないけど、客観的に見て、俺と課長のどっちがアイツに相応しいか、そのくらいのことは、ちゃんと見えてるよ。


石原の心の中にまだ、俺がいるって言われても、本当かよと思うし、例え、そうだとしてもそれは俺には関係のないことだ。


もう一度言う。俺は課長と争う気はない。もしあんたが石原を振り向かせられなくても、それは俺のせいじゃない・・・。
< 138 / 225 >

この作品をシェア

pagetop