Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
仕事が終わったあと、田代とちょっと忘年会の打ち合わせをして、会社を出ると


「サワ。」


と声を掛けられた。声の方を振り向くと


「小川。」


翔真の墓参り以来になる小川が立っていた。


「どうした?石原ならもう帰ったぞ。」


今から30分くらい前に、石原は内田達と帰って行った。


「そっか。電話したら留守電になったから、ひょっとしたらまだいるかなと思って、来てみたんだけど・・・。」


「LINE送ればいいじゃん。」


「送ったんだけど、既読にならなくて。デートかな?」


「さぁ?友達とオフィスを出て行くのは見たけどな。」


デート、の言葉になんとなくつっけんどんな口調になってしまったのを自覚して、ちょっと自己嫌悪。


「じゃその友達とアフター5満喫中ってことかな。ちゃんと約束してたわけじゃないから、仕方ない。このところ、お互いバタバタしてて、梓と全然連絡とってなくて。それに気がついたら、急に梓の顔が見たくなっちゃってさ。」


「なるほどな。まぁ石原もそのうち気づくだろうから、連絡来るだろ。じゃあな。」


と言って立ち去ろうとすると


「あっ、サワ。」


と呼び止める小川。俺が振り向くと


「どうせ、あんた暇でしょ?」


「あん?」


「じゃ、ちょっと付き合いなさいよ。久しぶりに飲もう。」


「別に構わねぇけど。」


「決まりだ、じゃ行こう。」


そう言うと、小川はスタスタ歩き出した。
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