Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
明日は土曜日。今年のイブは平日だから、盛り上がるのは、明日からの週末だろうな。


栞菜はどこだかに彼氏と行くって言って、俺の激怒を買って、ただいま冷戦真っ只中。健吾もなんか友達とオールで騒ぐって。まぁ奴は学生最後のクリスマスだし。


俺?家で読書かな。毎年そんなもんさ。そんなことより仕事、仕事。


そう言えば、オフィスの空気がおかしい。普段はあんなに仲の良い石原と内田が、ほとんど会話も交わさず、目も合わさず。


課長と石原も、仕事上では普段と変わらないが、昼食を摂りに行く時なんかは、なんとなくギクシャク感が。


みんな大人だし、ここはあくまで仕事場だから、基本的には知らん顔だけど、休憩時間には恰好の話題になってるだろう。


この日、課長は午後から取引先に外出、そのまま直帰らしい。


俺も社内他部との打ち合わせで、オフィスを離れた。一緒に出席するのが、内田なのが、ちょっと気重なのだか、まぁ仕方ない。


打ち合わせ自体は、特に問題なく終わった。あまり仲のよろしくない俺達は、行きも帰りも、ほとんど口をきかなかったが、オフィスに入ろうと俺がドアノブに手を掛けようとすると


「ねぇ。」


と内田の声が。


「はい。」


と一応先輩に対する返事をすると


「今日、残業になる?」


「たぶん。」


「何時くらいまで?」


と聞いて来る。


「さぁ?7時にはなっちゃうと思うけど。」


「君に話がある。」


「俺に?」


聞き返す俺に


「私も1時間くらい残業になるから、6時くらいには上がれない?」


「わかった、何とかします。」


「じゃ、よろしく。」


戸惑いを隠せない俺に、そう言うと、内田はさっさと中に入って行った。
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