Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
俺と違って、弟も妹も「健全」に成長してくれた。それに引き換え、俺は、週末の予定などあろうはずもない。


週明け、俺を迎える職場の雰囲気は微妙だろうな、きっと。


自らを「コミュ障」とカミングアウトし、先輩社員と怒鳴り合いをした挙句、自分が主賓の1人である宴会をサッサと中座して行った新入社員。


ややこしい、面倒臭い奴が来たもんだと思われても仕方ないなと、我ながら思う。


だけど、ご心配なく。コミュ障って言っても、別に引き籠る程のことじゃない。通りいっぺんの人付き合いくらい、出来なくはない。


ただ、人と必要以上に接するのが苦手というか、好きじゃないというか、ハッキリ言えば面倒臭い。少なくとも、自分からそういうものを求めたいとは、全く思わない。


それでも、仕事の面で、そんな自分の性格が周りに迷惑を掛けないようにする自信はある。これでも24年、それなりに社会に適合して生きて来たつもりだから。


それにしても、まさか石原と同僚になるなんて、考えてもみなかったなぁ。世間は広いようで狭い、とはよく聞くが、実感したよ。


あの時、緊張しながら、部屋に入った時、迎えてくれた先輩の中に、彼女の顔を見つけた時は、本当に驚いた。


すぐに石原だって、わかった。中学の時も可愛いかったけど、約10年ぶりに見た彼女は美しい大人の女性になっていた。


懐かしいという気持ちは当然あった。だけど、再会を手放しで喜ぶ気にもなれなかった。それは俺の性格もあるけど、俺と彼女の間にある因縁のせいでもある・・・。
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