Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「私がアイツのこと、とやかく言える立場じゃないのは、自覚してるけど、でも少なくとも当時は、特別イケメンでもカッコ良くもなかったし、梓の話を聞く限り、あんまり人間的に成長してるようにも思えない。惚れる要素を感じないんだけど。」


「・・・。」


「でも、あんたは現実に今の澤城を見て、それでも気持ちが変わらないんだ。」
 

「澤城くんは素敵な人だよ。人前でそれをなかなか見せないだけ。ひょっとしたら、澤城くん本人もそれに気付いてないのかもしれない。でも私はちゃんと知ってるから。」


そう、熱く語る私を見ていた美里は


「もったいないなぁ。」


とつぶやくように言う。


「高校でも大学でも、たぶん今でも引く手あまたなのに、『好きな人がいます』で全部断って、未だに彼氏いない歴=年齢を貫いてるんだもんね・・・。なのに、澤城はそんな梓を誤解したまま、嫌ってるなんて、なんか切ないというか、腹立って来るよね。」


「・・・。」


「腹立ってるのは、アイツに対してだけじゃなくて、自分にもだけどね。」


「美里・・・。」


そんなことを言う美里に、私が掛ける言葉を失っていると


「梓。」


と美里が座り直して、私を見る。


「約束してくれる?」


「何を?」


そう聞く私に


「来週中に、ゴールデンウィークに入る前に決着を付けるって。」


「美里・・・。」


「会社に仕事に行ってるんだから、いろいろ状況やタイミングがあるのは、わかるけど、今までと違って、アイツは手の届くところにいるんだから。とにかくなんとしても、アイツとちゃんと話しなよ。梓の思いをぶつけて、それに対するアイツの返事をちゃんと聞くんだよ。もう逃げたり、遠慮してる場合じゃない。そろそろ青春時代からの恋に決着付けて、前に進まないと。梓の為にならないよ。」 


「そう、そうだよね。」


その美里の言葉に、私も大きく頷いていた。
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