Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
そこへ、コーヒーが運ばれて来たので、少し助かった。


コーヒーを口に運び、座の雰囲気がちょっと変わった気がするので、私は改めて口を開いた。


「でもビックリしたなぁ。まさか澤城くんと、こんな形で再会するなんて。考えてみたこともなかった。」


「そりゃ、こっちも同じだよ。あの日、ガチガチに緊張して、部屋に入ったら、いきなりお前の顔が目に入って来て。『あっ、石原だ。』って。」


「えっ、澤城くん、私に最初から気付いてたの?」


「当たり前じゃん。中学の時のクラスメイトの顔がわからなくなるほど、まだボケちゃいねぇよ。」


と言って、澤城くんは笑う。


「でも、澤城くん。目が合っても、何にも言ってくれなかったじゃない。」


「それは、石原の方も同じじゃねぇか。」


「だって、私は・・・あなたに嫌われてると思ってたから・・・。」


「石原・・・。」


その私の言葉に、澤城くんはハッとしたように、私の顔を見る。


また訪れた沈黙。それを振り払うように私は口を開く。


「まだ怒ってるよね、あの事。」


そう言って、伺うように彼を見た私に、澤城くんは静かに首を振った。


「あれから何年経ったと思ってんだよ。」


そう言って、澤城くんは静かに笑った。
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