Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
出勤初日であり、新入社員達は、当然のことながら、私達とは全く交わることなく別行動。


社内の施設案内、挨拶周り、別室での座学など席を暖める暇もなく動き回っていたが、定時になり、私達に挨拶をして、帰って行った。


それを見送った既存社員達も、時間が来たので、徐々に帰宅の途につく。


私も1時間程残業したあと、席を立つ。すると、それを見た千尋が近寄って来た。


「梓、なんか気に障ることを言ったんならゴメン。」


昼間の私の態度を気にしていたらしい。


「ううん、何でもないんだよ。千尋に嫌な思いさせちゃったんなら、私の方こそゴメンね。」


私は千尋に笑顔を向ける。


「でも・・・。」


「本当に何でもないから、気にしないで。じゃ、ゴメン。今日はお先にね。」


そう言うと、何かまだ言いたげな千尋を残して、私はオフィスを後にした。


ゴメンね、千尋。心配してくれるあなたには申し訳ないんだけど、今はまだあなたに打ち明ける心の整理がつかないんだ。


心の中で、もう1度千尋に謝って、建物を出た私。今の私の揺れる気持ちを聞いて欲しいのは、社会人になってからの付き合いでしかない千尋ではなく、やっぱり全てを知っているあの子しかいない。


私は携帯を取り出すと、彼女の番号を呼び出した。
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