私の中におっさん(魔王)がいる。
見渡す限り、木と芝生と藪しか見えない。獣道もいつの間にかなくなってしまって、私はとりあえず藪は避けて進んでいたんだけど、もうそろそろそれも限界かも知れない。
戻ろうにも、どこをどう通ったのかわからない。
「完全に、迷子だぁ!」
私は泣きたい気分で叫んだ。
このまま遭難しちゃったらどうしよう。熊とかでる森だったらどうしよう。ひとたまりもないよ、私なんか。
それどころか、食べ物もないし、水もない……。
「これって、かなりヤバイ状態なんじゃない?」
青ざめながら、思わずぽつりと呟いた。
「スマホがあれば、助けを呼べるのに。私の鞄、どこ行っちゃったんだろう?」
あの白い空間ではたしかに持ってたのに……。空から落ちた時に落としたんだ。いやいや、ちょっと待って、そんなことあるはずないってば。あれは夢なんだから。
ダメだな。パニっくって変なこと考えてるよ。
「グギャア! グギャア!」
「きゃあああ! ――わわっ!」
奇怪な鳴き声が森に響き、慣れない下駄に思わず足を滑らせた。
豪快に尻餅をつく。
「うう……痛い。もう、最悪!」
お尻を擦りながら体を起こす。
するとその先、大きな木の根元に、見慣れた黒い塊があった。
「あれって――」
期待に胸が躍る。私は駆け出した。
「鞄だぁ!」
木に引っ掛けたのか、破けたり傷ついたりもしてるけど、まぎれもなく私の鞄だ。
「スマホ、スマホは無事!?」
ガサゴソと鞄を漁ると、水色の皮に蝶々の絵柄がプリントされている手帳型ケースが現われた。急いで開いてみる。
「すごい! 奇跡じゃん、壊れてない!」
壊れた様子はどこにもなかった。それどころか傷一つない。
「やった! これで助かる! えっと、とりあえず家に……いや、警察のほうが良いかも」
浮かれ気分で番号を押した。プップップップ――と、音がする。
(早く繋がって!)
祈ったときだ。
戻ろうにも、どこをどう通ったのかわからない。
「完全に、迷子だぁ!」
私は泣きたい気分で叫んだ。
このまま遭難しちゃったらどうしよう。熊とかでる森だったらどうしよう。ひとたまりもないよ、私なんか。
それどころか、食べ物もないし、水もない……。
「これって、かなりヤバイ状態なんじゃない?」
青ざめながら、思わずぽつりと呟いた。
「スマホがあれば、助けを呼べるのに。私の鞄、どこ行っちゃったんだろう?」
あの白い空間ではたしかに持ってたのに……。空から落ちた時に落としたんだ。いやいや、ちょっと待って、そんなことあるはずないってば。あれは夢なんだから。
ダメだな。パニっくって変なこと考えてるよ。
「グギャア! グギャア!」
「きゃあああ! ――わわっ!」
奇怪な鳴き声が森に響き、慣れない下駄に思わず足を滑らせた。
豪快に尻餅をつく。
「うう……痛い。もう、最悪!」
お尻を擦りながら体を起こす。
するとその先、大きな木の根元に、見慣れた黒い塊があった。
「あれって――」
期待に胸が躍る。私は駆け出した。
「鞄だぁ!」
木に引っ掛けたのか、破けたり傷ついたりもしてるけど、まぎれもなく私の鞄だ。
「スマホ、スマホは無事!?」
ガサゴソと鞄を漁ると、水色の皮に蝶々の絵柄がプリントされている手帳型ケースが現われた。急いで開いてみる。
「すごい! 奇跡じゃん、壊れてない!」
壊れた様子はどこにもなかった。それどころか傷一つない。
「やった! これで助かる! えっと、とりあえず家に……いや、警察のほうが良いかも」
浮かれ気分で番号を押した。プップップップ――と、音がする。
(早く繋がって!)
祈ったときだ。