Fall -誘拐-


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


“さっさと逃げろよ真田広之”と思っていたけど・・その気持ちがよく分かった。


貞子のような女性が一歩、
また一歩と僕に近づくけど、

ギター片手にその場から動けない。



「・・・・・・・・・え?」


「・・・スッ・・・・・スッ・・。」


・・な、泣いてる?


と思ったら俯いていたその顔を上げて、

貞子から・・・・美女過ぎる、
髪の長い女性に変身した。


「・・だ、大丈夫ですか?」


「あの・・・最後の曲・・
すごく感動しました。」


「・・・・・・・えー!!?」


涙目のその女性が一転、
パアッと明るい笑顔を見せてくれる。


空き缶に入っていた10円玉が吹っ飛ぶくらい、プライスレスの笑顔だった。



「こんなに心掴まれたの初めてです!」


「・・・ご、ごめん。

そんなドストレートに褒められたの初めてだから・・

リアクション取りづらいよ・・。」



目の前しか視界に入っていなかったので気付かなかった。


ちょうどここを通りかかった時に僕が最後の曲を歌い出したらしく、

思わず足を止めたと教えてくれた。


・・・間違いなく今の自分を鏡で見たら、
鼻の下が伸びてる。

そしてもれなく調子に乗ってしまう。

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