カイザー
今。
息子はもうすぐ5歳になる。娘は2歳になった。
2人とも元気にすくすく成長している。

「おかあさーん。ぼく、お母さんのお腹から産まれたんでしょ?」
無邪気に尋ねてくる息子。
「そうよー。ママのここから産まれたのよ〜」
そう言って、白く薄い線となった傷を見せる。

今でもやっぱり、心残りはある。
出産について、なんとなく物足りないような穴が開いたような不思議な感じ。でも、きっとそれはだんだんと薄れていく。

子供に帝王切開の傷を見せることには賛否両論あると思う。
私は、敢えて見せている。そこから産まれたのは事実だから。見せても見せなくても、息子も娘もいつか、自分たちが帝王切開で産まれたことを知る。
それについて、なにかを思うときが来るかもしれない。

その時はきちんと伝えたい。

帝王切開のこと。
あなたたちの命がなによりも大切だったということ。
あなたたちが産まれてきて本当に嬉しいということ。
ママは今とても幸せだということを。
< 14 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop