midday crow
「……精算を……」

「ん?」

数段下で彩人が振り返った。

いつの間にか紅羽の足は止まっていて、古めかしい手すりを右手で握りしめている。

「……精算を、しなきゃならない……と、思ってる」

「……精算」

なにに対して? と問いかける彩人の声は優しい。

どうしてだろうか、紅羽は抵抗なく、すんなり言葉を吐き出していた。

「太陽くんと、……」

太陽の他に思い浮かんだ顔は二つ。

けれど彼らの名前を言えなかった。
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