白井君の慰め方

ふらふらと歩き出す私の背中に、「考え過ぎんなよー」と、三嶋君の声が聞こえた。考え過ぎるなの言葉は確かに大事だった。
そう、とりあえず本人に確認しないと、私は私の事でしか考えられないから、えっと、でも無視された訳で、怒ってたって事は、やっぱり嫌われたって事以外に何かある…?

意気消沈。でも仕方ない、私のせい。だって普通に考えて白井君が他の女子に肩組まれて親友だのなんだの言って楽しそうにしていたら嫌だ。最悪、相手の女子共々呪ってしまうかもしれない。私は三嶋君の事を本当に何とも思っていないし、むしろウザいと思うくらいだけれど、白井君からしたらそんな事は関係ない。だって私だったら白井君がなんとも思ってなくても恨めしく思う。だからそう。白井君に嫌な思いをさせた私が悪い。全面的に悪い。

しっかり怒られた方が良いし、謝りたい。例え嫌われちゃってもうダメだとしても。

放課後。いつもの場所で白井君を待つ事にした。前までの私だったら家に帰って布団の中で泣きながら一人でぐるぐる考えていただろうけど、それではダメだと知っているのが今の私だ。それは相手を傷付ける事にもなるのだと、ちゃんと分かっている。だって悪いのは私。謝らせて貰って、向こうに判断して貰おう。本当は今すぐ逃げ出したいけど、それは白井君を大事にしている事にはならない。

足音が聞こえて来る。顔を上げて確認すると、それは白井君だった。部活終わりにいつも通り、私と帰る為に一人で来てくれた。

「白井君」

声を掛けると、白井君が答えてくれた。嬉しかった。いつも通りの白井君に見えた。もしかしたら怒ってないのかもしれない、なんて思った。でもそういう問題じゃない。

「白井君、あの…ごめんね」
「?何が?」
「あの、昼休み…」

途端に、白井君の表情が曇り、私は一度口を閉じた。やっぱり白井君にとって嫌な事だったのだ。怒ってないかもとか、そんな風に思って少しホッとした自分は最低だった。

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