白井君の慰め方

評価するのもさせるのも自分


付き合うという事は、お互いを大切にし合う事。
私だけじゃなくて、白井君からも大切にして貰えるという事。

ただ好きだった時とはまるで違う世界だ。私は白井君が好きで、白井君も私が好き。こんな奇跡を再確認して、それが現実であると受け入れると、なんだか自分の事すら大切に思えるようになった。

白井君が大切にしてくれる自分を、大切にしなければと思う。私が私をぞんざいに扱ったら、きっと白井君は悲しむだろう。白井君が大切にしてくれているのに、それを大切に扱わないのは失礼な事だ。そんな思いからか、私の上がり下がりのあるメンタルはだいぶ安定したように思う。

「それって自信がついたって事じゃない?」

友人から言われた言葉だ。そうかもしれないと思う。そんなものこれっぽっちも無かったけれど、それが今少しだけ自分を大事に思うのは、白井君がくれた気持ちの先にあった答えなんだと思う。



「あれ?楓ちゃん?」

白井君との帰り道。二人で電車が来るのを待っていると偶然出会って、声を掛けてくれたのは懐かしいこの人。

「先輩」

驚いた。まさか、また昔みたいに声を掛けてくれるとは思わなかったからだ。あんなに酷い事をしたのに、先輩は変わらない明るさで、「久しぶり!元気だった?」と尋ねてくれる。

ーー白井君が、私に自信をくれた。だから私はこの人の前でも笑っていられる。もうあの頃の私とは違う。

「はい、元気です」

< 107 / 120 >

この作品をシェア

pagetop