白井君の慰め方

悩んでたって何も解決しない



白井君は隣のクラスの男子だ。白井君の事を友達に聞くと、みんな口を揃えて「なんか冴えないよね」という。背が高いし、顔も小さいし、手足だって長いのに、何故か目立たない。声が低めで落ち着いた感じで話すからかな…それとももしゃもしゃの毛質で重めの前髪のせいかな…色白でいかにもインドア派な感じのせいかな…分からないけど、私もなんか冴えないなと思っていたのは事実だ。

今でも冴えない雰囲気なのは変わらない。というか、彼自身が何か変わった訳では無い。それなのになんだかやけに白井君が目に入るようになって、白井君が気になって仕方なくて、そうなるともう白井君はただの冴えない男子では無くて…冴えない所は彼の一番素敵な所、くらいに輝いて見える白井君さ、私にとって特別な存在になった。

白井君ともっと話してみたいな。そう考えるようになった所で、ようやく私は我にかえった。先輩との事はどうするのだ、先輩とこのままで居る訳にはいかない。白井君を見かける度にあの日の出来事が蘇り、慰めて貰った分だけどうにかしなければと焦るのだ。じゃないとここから何も進めない。

先輩との今後をどうしようかと考えてはみたものの、私なんかが思いつくような選択肢なんて、どれも陳腐な物だった。

まず思いついたのは、先輩にこの件を問い質す事。でもそれで結局何と答えられても困ってしまうのは私だった。そこで本当の事を告げられても、嘘で誤魔化されても、私は頷く事しか出来ない。で、どうしたいの?と言われてしまったらどうすればいいのか分からない。

そう、分からないのだ。どうしたいの?の先の、先輩と別れるという手段も思いついたものの、私からそんな事を切り出せるのかという話になると…というかもはや、先輩と私は付き合っているのかすら考えれば考えるほど疑問に思えてきて…私ごときが別れて下さい、なんて言える訳が無い事実と直面しただけで終わった。先輩を前にして私がそんな大層な事を切り出せる訳が無いのだ。いつもだってドキドキして終わってしまうだけなのに。


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