二人を繋ぐ愛の歌
『冗談。
頂点もその先の野望も自分達の力で手に入れて叶えるよ』

『自分達のってことは、お前にもあるのか?頂点の先の野望が』

そう言った勇人の真剣な目はアイドルとしてのそれではなく、子を想う父親のような目をしていたように感じた。
それにハルトも気付いたかは分からなかったが、ハルトは一度だけ目を伏せるとすぐに真っ直ぐな瞳を勇人が見ているであろう中継を映しているカメラに向けた。

『あるよ。
頂点に立つのと同じくらい大事な野望が』

そう言いながら右手で拳を作り自分の胸に当てたハルトの姿を見て、勇人はほんの少しだけ口角を上げた気がした。

『さあっ!もうすぐ発表だよ!会場のみんなも、そっちのみんなも一斉にカウントダウンお願いしますっ!!』

ユウナの言葉にスクリーンの中心に大きく数字が出るのを確認すると全員が大きな声を出してカウントダウンを始めた。

0になる瞬間、沙弓は胸の前で組んだ自分の両手が真っ白になっているのも気付かないほど強く握り、目を瞑って俯いた。

途端、周りから大歓声が沸き起こり、それはすぐに戸惑いの声も混じるようになった。
どうしたのかとそっと目を開けようとしたその時、沙弓の体は強い衝撃と共に暖かい何かに包まれた。
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