二人を繋ぐ愛の歌
話し合いから解放されて自分の部署に戻ると、遥を筆頭に室内にいた殆どの人……主に女性が沙弓に押し寄せてきた。

聞かれるのはShineの二人のことばかりで、格好良かったかとか可愛かったかとか、どんな話をしたかとか聞かれて、仕事内容に差し障りない事だけを話したら最後に必ず、羨ましい~。と言われた。

「でも、私はその場にいただけなんだけど……」

「Shineの顔を間近で拝めて同じ空気を吸えるだけで羨ましいのっ!」

どうやら芸能人と言うのは一般人からしたらそういうものらしく、やはり自分はそう言ったものにあまりにも感心がないんだろうなと改めて認識した。

仕事も終わり【多幸】に寄ってまだ動くのが辛そうな叔父の様子を見舞ってから余った惣菜を寄せ集めて作ってもらったお弁当を貰う。
家に帰ってからスマホをテーブルに置くと、スマホカバーの内ポケットに小さな紙切れが見えた。

「あ、忘れてた……」

就業中は回りの目があったのでまだ中身は見てないけれど、陽人のあの言葉から察するに恐らくこれは連絡先だろう。
そっと紙を取り出してゆっくり開いてみると、そこにはやはり陽人の連絡先とメッセージが一言だけ書かれていた。

「“必ず連絡してくること!”か……。
仕事中かもしれないから、電話じゃなくていいよね……?」

スマホに連絡先を登録してメッセージアプリを開くと新しく追加された陽人の名前を見る。
仕事関係以外での異性の人の名前は父親と叔父を除いたら陽人だけだ。

さて、どう打ったらいいだろうか。とスマホ片手に暫く悩んで大分経ってからやっとスマホに指を滑らせたのだった。
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