二人を繋ぐ愛の歌
格好良いと思ってしまった
「やあ、こんばんは」

「え……陽人さん!?」

会社を出たすぐ近くの所にある街灯の下。
良く見かけるボサボサ頭の前髪で顔を隠した姿で何の連絡もなく立っていた陽人を見て沙弓は驚いて固まってしまった。

「何してるんですかこんな所で……あ、部長か誰かお待ちですか?呼んできましょうか?」

「いや、大丈夫。
俺が待ってたのは君だから」

そう言われて沙弓は目を瞬かせた。

何か約束でもしただろうか。
いや、陽人とは最初に連絡をしてからはメッセージのやり取りをしていない。

そう一人で考えていると陽人はそっと手を伸ばしてきて親指で沙弓の眉間に触れるとそのままグリグリと揉みほぐした。

「っ……何ですか、急に」

「ここ皺寄せてたからマッサージ。
女の子なんだから気を付けないと戻らなくなるよ?」

「誰のせいでこんな顔になってると思ってるんですか!それに、女の子って言う歳でもないですよ」

じとっと恨めしそうに睨み付けると陽人はきょとんとした。
しかし次の瞬間に吹き出して声を出して笑い、ゆっくりと親指を離した。

肩を揺らして一頻り笑った後、陽人は目を細めて沙弓を見下ろすが沙弓は陽人にマッサージされて若干赤くなったであろう眉間を擦っていてその眼差しには気付かなかった。

「……それで、本当は何の為に来たんですか?」

「だから、今日は君に会いに来たんだよ」

「約束はしてなかったですよね?何の為ですか?」

訝しげに再び眉を寄せてしまったその表情が再び陽人の笑いを呼び起こしたようで、陽人は慌てて顔を背けていたが揺れている肩を見れば笑いを堪えているのは一目瞭然だった。

暫く放っておいた後やっと笑いが治まったらしい陽人が沙弓の方へ体を向けると、陽人のその瞳は好奇心を宿していてどこかワクワクしているようにも見えた。
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