太陽と月の物語

彼が陸上部の練習に向かうと、私は当然のように麻子に連れて行かれた。校庭の片隅で練習する陸上部がよく見える廊下に。

「真月くん。やっぱ、かっこいい」

この頃の真月は陸上の期待の星だった。私とは違う小学校だったから当時知らなかったが、彼はこの街の地区大会で優勝経験を持っていたのだと、麻子の話で知った。

「ちなみに長距離の星は真月くんの親友の心くんだって」
「心くんって……」
「あの子」

麻子が指を差したのは、やっぱりさっき私に会釈してくれた人だった。笑顔が印象的だった彼。

今は一心不乱に腹筋をしている。

「心くんとは保育園時代からの友達なんだって」
「そうなんだ」

麻子はこの三日間で真月から知り得た話を彼の部活が終わるまで、話してくれた。
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