太陽と月の物語

見間違えるはずもない。
だって15年間も隣にいたのだ。

一番好きな人になれなかったけれど、だけど誰よりも一番近くにいたのだ。

「……真月」

逃げだそうとした。思わず……走ろうとした。

最近ではちょっと動くだけで息が切れる妊婦がそんなこと叶うはずもない。

「朝陽……!」

腕をグッと掴まれた。
そして、後ろから抱きしめられる。逃がさないぞと言わんばかりの強い力。肩に顔を埋められた。

「……やっと見つけた」

なぜ、真月がいるんだろう?
なぜ、真月は私を探していたんだろう?

「……どうして?」
「それは俺が聞きたい!どうして、突然いなくなったんだよ!?」

真月が体を離し、私のことを覗き込んでくる。そしてあることに気づき、目を見開いた。

「お前、そのお腹!もしかして……」

隠していたことがバレてしまった。8ヶ月目に入ったお腹はいかにも妊婦さんという形をしているため、もう誤魔化しようがない。

「妊娠してるよ」
< 106 / 121 >

この作品をシェア

pagetop