太陽と月の物語

そこからの真月の行動は早かった。

康晴さんと真紀子さんに、これまで私を放置していたことへの謝罪と今日まで支えてくれたことの感謝の言葉を述べたあと、結婚後、真月もこの家に一緒に住むことを了承させた。

「朝陽ちゃんの部屋、二人の寝室にすればいいじゃない」
「離れが今は物置になっているが、片付けて空ちゃんの子ども部屋にすればいいよ」
「その頃には、孫の数が増えているかもしれないわね〜」

真紀子さんと康晴さんが楽しそうに声を弾ませる。
いつの間にかプライベートルームに行っていたはなも、真月に擦り寄る。恐る恐るといった手つきで真月が顎を撫でると、まんざらでもなさそうな顔をした。

「はなちゃんなりのご挨拶みたいね」
「宜しくな、はな」
「みゃー」

はなは真月が気に入ったのか、そのまま彼の膝に乗った。そろそろ肌寒い季節だから、人肌が温かいのだろう。

「今日はもう遅いから泊まっていきなさい。真月くん」
「いいんですか?」
「この辺は街灯も少ないし、道幅も狭いから、初めて来た人が夜帰るのは危ないよ」
「そうそう」
「ありがとうございます。助かります」

その日の夜ごはんは、私達の結婚祝いの祝杯だと康晴さんが珍しくお酒を飲んでいた。真月が企画した日本酒だった。

真月が康晴さんと杯を交わす。

居間に置かれた黒電話の隣で、写真の中の心くんが、その様子を見ながら微笑んでいた。
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