太陽と月の物語

「お待たせ、あさ。って、あれ?朝陽も?」

先に来たのは真月だった。
真月は麻子のことを「あさ」と呼ぶ。麻子曰く、他の誰も呼んでいない名前で呼びたいらしい。

「朝陽もね。心くんと待ち合わせなんだって」
「へぇ。どこ行くの?」
「水族館」
「一緒じゃん」

待ち合わせは9:30だから、まだ5分以上ある。真月も心くんがくるのを一緒に待っていてくれるようだ。

「俺らも一緒に待って、心を驚かせてやろう」
「あたし、賛成!」

どうせ待つなら1人より3人のほうが楽しいから、一緒に待っていてもらうことにした。

「そういえば、朝陽って心くんと付き合ってどれくらいになるの?」
「今日で半年だよ」
「もうそんなになるんだ〜!」

ちなみにこないだ、心くんは『ずっと一緒にいる気がするのに、まだたったの半年なんだな』って言っていた。

当事者と周りの印象は随分違うようだ。

「夏ぐらいは一体いつになったらくっつくんだろう?って思ってたのにな」

と真月。

「えー。そんなこと思われてたの!?」
「心のやつ、ずーっと俺の前で朝陽の話ばっかすんの。よその男に取られる前に自分のものにしとけよって言っても、きっかけがないとか言って、あいつはめちゃくちゃヘタレだった」
「ヘタレ……」

心くん……。ヘタレ呼ばわりされてるよ……?今頃、くしゃみしてたりして。
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