光りの中
 この顛末を見て、凛子は紀子を只者ではないと感じた。


 この子は天性の水商売人や。

 理屈やのうて肌で客商売のなんたるかを判っとる。

 けど、まだ子供や。

 それも無垢な子供や。

 きちんと、ほんまの怖さも教えなあかん……

 うちが……


 それからだった。

 凛子は、事細かに水商売のいろはを教え始めたのである。

 それだけでは無い。

 自分の贔屓客にも紀子を引き合わせ、時には指名を入れさせたのである。

 紀子自身、凛子には他のホステス以上に素直になれた。

 かなり厳しい事を言われても、全て納得して受け入れられた。

 凛子は、紀子は天性の水商売人と感じ取ったが、実際の所は若干ニュアンスが異なる。

 彼女は水商売云々と言うよりも、体質として人に喜ばれたいという部分が人並み以上にあると言った方が当たっている。

 この頃の紀子にはまだそれを自覚するだけの意識は無かったが。

 尤も、本人自身がその事に気付いたのは、かなり後の事になる。

 自らの裸で喝采を浴びるようになってからの事である。




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