光りの中
 彼女は僕に一枚の紙を差し出し、


「一応、この段取りで照明して欲しいねん。幕ありで、この部分の照明は、お兄さんのセンスに任すけど、暗転のタイミングだけは、ずらさんといて欲しいねん」

 姿月は衣装ケースの中からMDを取り出し、これが音と言って僕に手渡して来た。

 何時も以上に緊張している自分が居た。

「正直言って、うちの照明はたいして数もないし、フラットな照明ですから満足して貰える出来になるかどうか……」

「それはかまへん。取り敢えずダンスの所をそれなりに派手にしてくれて、頭の部分との差を付けてくれればええから」

 彼女の関西弁が何気に心地良かった。

 一回目の開演が近付く。

 この時の顔触れを十年経った今でもハッキリと覚えている。

 トップは新宿の有名劇場所属の『百華』

 二番目に同じ劇場所属で、まだデビューして間もない『小室亜美』

 三番目は姿月を慕う『小夏』

 四番目が、大阪は九条の劇場から来た『河仲美樹』

 五番目に千葉の劇場時代にもライトを当てた事のある『向井レイ』

 トリ前が東のロック、西の十三と呼ばれた有名劇場所属の人気娘『綾波ナナ』

 そしてトリが『姿月』だった。

 金の取れる顔触れだった。

 実際の話し、シアター アート程度の小屋にしてみれば、かなりの顔触れだった。

 一回目の開演時間になった。

 何時も以上に客の入りが良いように感じた。

 時間が来た。

 開演のアナウンスをする。

 新しい十日間の始まり。

 そして、それは新しい感動の出会いでもあった。




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