光りの中
光りの果てに
 深夜の東名をひた走る高速バスの中で、姿月は眠れずに悶々としていた。

 つい何時間か前迄の興奮がまだ身体の中で燻ったままでいる。

 その燻った感情に、間違いなく数時間後にやって来るであろう嫌悪感とが絡み合っていた。

 嫌悪感……

 自らが所属する劇場事務所との確執……

 いわれなき中傷と誹謗……

 話しはデビュー当初に遡る。

 AVの世界からこの業界に転出して来た当初、他のAV出身ストリッパー同様、アイドル路線で売り込む事を余儀なくされた。

 本人の意思や希望など入り込む余地など無く、勝手にデビューが決まり、劇場事務所の都合だけで全ての段取りが組まれていた。

 訳も判らず舞台に乗せられた。

 ストリップの世界に導いてくれたのは、AV当時の事務所の社長ではあったが、やると決断したのはあくまでも自分の意思であるという思いが強い。

 それに、他人が定めたレールに従う事が昔から嫌いだった。

 自分で決めた事ならば中途半端はしないという自信はある。

 もとより自分がフリフリの衣装を着て、ただニコニコして裸になるなんて似合わないと思っていたし、例えたかがストリップとはいえ、自分が納得出来るステージじゃなければ観る者を納得させる事など出来ない。

 劇場事務所の社長は元踊り子だ。

 ならば余計にその辺の心情を判ってくれる筈なのに、という思いもある。

 踊り子の世界は出入りが激しい。

 一年もすると、所属事務所の中でも中堅クラスになる。

 この頃には姿月の舞台は今のようなスタイルになっていた。


「ちゃらちゃら踊ってただ脱ぐだけやったらアホでも出来る。そのステージを観て、誰それのステージって判るような意味のある舞台をやりたいんよ」


 姿月は自分の後輩だけでなく、先輩の踊り子仲間にも言って、実際にそうして来た。

 自分の意のままにならない姿月が所属劇場から嫌われだしたのは、ある意味至極当然の成り行きだった。

 以来、組まれるスケジュールは姿月本人の意向を無視したようなものとなり、完全に扱いがぞんざいになった。


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