断片的な、
眠れない辛さを知っているだろうか。
目を瞑ると自分の毛細血管が見える。
瞼は閉じたいるのに目は閉じていないみたいだ。
急にパッと血管が見えなくなったと思ったら、
今度は肌を埃が撫で続ける。
気持ちの悪い強さと温度である。
それに加え、音と匂い。
ギターのホールが空気と振動し、壁が気温差でうなり声をあげる。
ボーンともウォーンとも聞こえる音は頭に心臓に響きまわる。
音はそれだけでなく、自分の肌と衣服、衣服と布団の擦れる音。
気圧の差で隙間から漏れ出ている空気の音などあげだしたらキリがない。
いつも使っているシャンプーや石鹸はフローラルという言葉の響きとは全く異なるにおいをしている。
枕元に置いてある自分を慰める時に申し訳なく出たものは、すべての人を不快にするような。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、
四つの感覚が力を合わせて眠りを阻害してくる。
そこに生まれる焦りや怒り、憂いなどの感情もまた一緒になって邪魔をしてくる。
僕は寝たいのに僕が寝かしてくれないようだ。
やっとそれが気にならなくなり始めたころ、
急に何ががバチッという音とともに訪れる。
そしてまた、彼も眠りを阻害する。
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