夏の宵と林檎飴【短編集】

“明日16時に、花火大会の最寄りの駅前の噴水広場で。”

数日後、彼からほぼ初めて届いたLINEは意外とあっけなくて。

浴衣とか着て行った方がいいのかな?
いや、動きづらくて大山くんについていけなくなっちゃうかも…。

でもやっぱり、浴衣姿を見てほしい。
…ギャップ萌えとか、意外とあるかもしれないし!そういうことだよ!

自分にひたすら言い聞かせて、箪笥の奥に眠っていた浴衣を引っ張り出した。

.*・゚ .゚・*.

日をまたいで、当日。
16時の15分前を見込んで駅に着くと、思った通りたくさんの人で満ち溢れていて。

こんな中で大山くんのことを探すなんて、無茶じゃない…!?
と、思っていたのに。

(あ、いた)

噴水広場と銘打っておきながら水の出ていない噴水の淵のところに腰をかけてスマホをいじっていただけなのに、すぐに目にとまる彼の姿。
手元のスマホを見て満足げに微笑んだかと思うと、私のスマホが震えて。

慌てて開くと、彼からのメッセージが一件、と表示されていた。


『先輩、浴衣かわいい』

…エスパーか何か?
そのままパッと顔を上げると、彼はニコニコという効果音がつきそうなほどの笑顔で駆け寄ってきていた。
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