再会ロマンス~幼なじみの甘い溺愛~

こうなったら、私が何を言っても無理だろう。
それは今までのやりとりで実証されている。
はぁ、私ってこんなに押しに弱かったかな。
でも、正直な話、朝のバスは混みそうだから車で一緒に連れて行ってもらったら助かるけど。

「じゃあ、テツが早く出勤しない時はお願いしてもいい?」

「もちろんだ」

テツは満足そうに言い、みそ汁を飲んだ。

食べ終わった食器を洗い、急いで歯磨きをする。
八時過ぎに家を出るので、朝は忙しい。
今まではテツを送り出してからやっていた家事を、仕事に行く前に終わらせないといけないからバタバタだ。
先に家のことを済ませ、やっと自分のことができる。
テツは準備が終わり、リビングで新聞に目を通していた。

今日から本格的に引き継ぎが始まる。
覚えることもたくさんありそうだし、気合いをいれていかないとついていけないと思う。
私のポンコツ脳がちゃんと機能してくれればいいけど。
着替えを済ませ、小さな鏡の前でメイクをする。
今日も髪の毛をひとつに結んで立ち上がり、バッグを掴んだ。

「出来たか?」

部屋から出ると、すっかり仕事モードになったテツがリビングから声をかけてきた。

「うん」

「じゃあ、行くか」

私は昨日使った家の鍵をバッグの中に入れると玄関のドアを開けた。
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