惑星のダンス
別に確認する気はなかった。ただ、なんとなく部屋を見回しただけ。

床から身を起こしている男子生徒と、ばっちり目が合ってしまったのは、偶然だ。

「……!」

「あ。──ソラ」

彼の顔を見て、つい名前を──芸名を呟いてしまったのも、条件反射。他意はなかった。

目が合ってただでさえ焦っていた彼は、呟きを聞きとめてその顔を青くした。

素早く立ち上がったかと思うと愛を捕まえ、美術室の扉を勢いよく閉める。

トン、と愛は閉まった扉に押しつけられた。彼の両腕が愛を囲い込む。

ぐっ、と彼はその顔を──アイドルグループ“PLANET”ソラの端正な顔を、愛に近づける。

「おい、あんた。俺がソラでこの学校に通ってるってことは──」

「……ああ」

無感動に愛は独りごちる。

「わからないか」

「……なんだ?」

思っていた反応と違ったのだろう、彼は動揺したらしい。

やや緩んだ腕の囲いからするりと抜け、愛は眼鏡を外しつつ振り返る。

「おはよう。山瀬天くん。同じクラスの天野愛だよ。──そして、“Venus”のアイでもある」

「……あー! いや、……ええっ!?」

大声を出さないでほしい。そして、人を指さすなと習わなかったのだろうか。

目を丸くして絶句する天に対して、愛は無表情で肩を竦めて見せた。
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