飛鳥くんはクールなんかじゃない



「……花帆。頼むから」


こんなに苦しい声が出たのは初めてかもしれない。


自分が思ってる以上に、俺は焦ってる。



握り続けている小さな花帆の手を、絶対に離しはしない。



「……」


ゆっくりと、彼女の顔が俺に向いた。その表情に、瞳に、心臓が音を立てる。



「……っ」


その目は、いまにも涙がこぼれそうだった。


……なんで。



ドクンと波打つ音が止まらない。


ただ泣いてるだけなら、俺はまだお前の気持ちがわかったかもしれない。


でも、泣いてるはずのその頬の色は。



「……ずりぃだろ、その顔……」



< 193 / 271 >

この作品をシェア

pagetop