願い婚~幸せであるように~
流れる時間
気掛かりなことを封印したままではいけない。後回しにしてもいけない。

月曜日になり、幸樹さんから離れなくてはいけないと分かっているのに、私は彼の背中にしがみついていた。

離れることが不安なのだ。後ろから回る私の手は彼の腹部にあり、その手はぎゅっと握られる。


「和花、やっぱり送るよ。一緒に出よう」

「ううん。今日は取引先に直行だから、ひとりで行く」

「そうか。じゃあ、俺は行くね。ごめん、和花……離してくれる?」

「うん……。行ってらっしゃい」


回していた手を離して、彼の背中をそっと押した。離れがたいけど、お互い仕事に行かなくてはいけない。


「行ってくるね。なにかあったら、なんでもいいからいつでも電話して。すぐには出れないかもしれないけど、必ず折り返すから」

「うん、ありがとう」


彼を安心させなくてはいけないと笑う私の瞳は揺れてしまう。いつまでもここに留まらせてはいられない。

私も仕事に気持ちを切り替えよう。余計なことを考える暇がないくらい仕事に集中しよう。

精一杯の笑顔を見せて、幸樹さんを送り出し、自分の身支度も整えた。


取引先最寄り駅で、中野課長と待ち合わせをしている。先に到着していた課長に「おはようございます」と声をかける。
< 121 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop