願い婚~幸せであるように~
タクシーで帰路につく。今まであまりタクシーに乗ることはなかったが、幸樹さんと出会ってから乗る機会が増えた。彼は電車よりもゆったり休めるからタクシーが好きだと言う。

それと利用するタクシー会社は決まっていて、幸樹さんにGPSがついているのでは?と思うくらい、いつも良いタイミングで乗れる。

マンションに到着すると、コンシェルジュの方に呼び止められた。


「二時間くらい前に、小橋さまという女性の方がお訪ねになりました。不在をお伝えすると帰っていかれました」

「ああ、そうですか。伝言はありますか?」

「いいえ、ございません」

「分かりました。ありがとうございます」


コンシェルジュと話す幸樹さんを見た。一瞬眉根を寄せたが、穏やかに応対していた。

小橋という名前に心当たりがない。私の知り合いにはいない名前だから、幸樹さんの知り合いだろう。夜に訪ねてくるとは……親戚の方だろうか。


「幸樹さんのお知り合いの方?」

「ああ、仕事関係の人なんだけど、急用だったらそのうち連絡くると思うから、気にしなくていいよ」

「そう……」


なんだか胸騒ぎがする。仕事関係の人がわざわざ夜、家にまで訪ねてくるものだろうか?
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