キミに、愛と思いやりを

次の日、あたしは歩に手紙を渡すことにした。
……でも手紙、どうやって渡そう。


麗羅の言う通り、今の歩じゃ口を聞いてくれそうにないよね。
だからきっと、あたしが直接渡そうとしてもきっと受け取ってもらえない。


歩の家に行って、ポストにでも入れよう。
だけど、鉢合わせにでもなってしまったらどうしよう。


……そう思うと、足がすくんでしまう。



「小園さん?」



声のする方を見ると、宇野くんが不思議そうな顔をしていた。



「ん?」



「その紙、何?」



「ちょっと渡す相手がいて……」



「渡す相手?」



うん、やっぱり気になるよね。
あたしは、正直に話すことにした。



「宇野くん、歩を覚えてる?」



「仙谷 歩?」



「そうそう。ちょっと色々あって……」



「俺、聞いたらまずいかな?」



宇野くんはそう聞きながら、頭を掻いた。
ちょっと話しづらいけど、断ったりするのが得意じゃないあたしからすると、遠慮がちに聞かれたら『うん』と言えない。



「うーん……。ううん、話して大丈夫なら話すよ!」



あたしは、重い口を開いて状況を話すことにした。




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