アンバランスな苦悩
俺は笑った

車を発進する前に
スミレに触れたい

スミレの手を握ると
キスをしようと

体を動かした

助手席に身を乗り出すと

「瑛ちゃん、嫌だ!」

スミレが胸を押し返してきた

そして顔をそむけた

「何で?」

「さっきまで
誰と会ってたの?」

え?

「香水の匂いがする
甘い香りだよ

こんな匂い
先生たちからはしないし

お姉ちゃんの香水とも違う

メールする前

保健室に行ったら

保健室に鍵がかかって
電気も消えてた

それなのに
車は校内にあって」

俺は運転席に座りなおすと
車を発進させた

「知りあいに会ってた
近くまで来たっていうから

カフェでお茶して

スミレのメールで
すぐに別れた」

「カフェでお茶しただけで
匂いがこんなに移るもの?」

「スミレは何を
想像してるの?」

桜さんがくっついて
話をしてきたから

スーツに匂いが移ったのだろう

なんてことを
してくれるんだ

気分を害したした上に
スミレに誤解された

こんなんでは
また初エッチは
先送りだ

スミレの気持ちがやっと
固まったと思ったのに
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