アンバランスな苦悩
「留守電に
彼氏から電話が入ってましたよ」

「彼氏?
今は瑛ちゃんだけよ」

俺は手に持っていた
調査した書類ごと
ゴミ箱に放り投げた

「ああん
瑛ちゃんの写真があるのに
捨てないで」

桜さんから
離れると

俺は椅子にかけておいた
上着を羽織った

「何してるの?」

「帰ります」

「泊って行って
明日は土曜日でしょ?

仕事はお休みよね?」

「帰ります」

「どうして?
まだ一回して
泊ってくれない」

「どんなに
遅くなろうと

俺は家に帰ります

母親が心配するし

弟はまだ高校生です

乱れた生活を
見せるべきではないと
思ってますから」

「瑛ちゃんって
本当に優しいのね

家族にたいしてだけ

私には冷たい
優しかったのは

初めて体を重ねてから
1年もなかったわ

大人になるにつれて
瑛ちゃんは
私を嫌いになっていくの

でも私は
どんどん
瑛ちゃんを愛してしまう

どんな男に抱かれても

瑛ちゃんを
超える男に出会わない」

違う
桜さんは
俺を愛してなんかいない

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