アンバランスな苦悩
ベッドにある布団と毛布を手に取ると
スミレの体に巻きつけた

「布団だけじゃ
嫌だよ

瑛ちゃんが温めて」

俺は首を横に振る

そんなことしたら
俺は
スミレを抱いてしまう

「ファンヒーターをつけるから」

「いらない
瑛ちゃんに温めてもらうの

だからわざと
寒いベランダにいたんだ

体を冷やせば
温めるために
肌を重ねられる」

「何を考えているんだ!
俺が帰ってこなかったら
どうするんだ」

「帰ってくるよ
瑛ちゃん、泊まったことないもの」

そうだけど

もし今日に限って帰ってこなかったら
どうするつもりだったんだ

俺は
スミレから顔をそむけた

「風邪ひいたら
どうするんだ!」

「そしたら
保健室で瑛ちゃんに看病してもらう

それで
瑛ちゃんに風邪をうつしちゃうの

うつすようなことをするの
私が
瑛ちゃんを襲うの」

スミレが俺の腕を掴む

細い腕が震えていた

寒さで震えているのか
それとも
緊張しているのか

俺はスミレの手を握った

「駄目だよ
スミレがこの部屋にいるなら
俺は居間で寝るよ」

「嫌だ
瑛ちゃんと一緒にいるって決めた

2月には
遠くに行っちゃうから

それまで
私は瑛ちゃんと肌を重ね合うって決めたの

2月まででいいから
私を愛して

お願い」

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