香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
……六時か。
ここでは朝食の時間が向こうの世界の九時ごろと少し遅い。
「庭を散歩でもしようかな」
考えてみたら、昨日は一歩も外を出ていない。
右足の腫れはすっかり引いているし、痛みもあまりないから庭を歩くくらいなら問題ないだろう。
そう思い立って夜着の上に薄手のガウンを羽織り、部屋を出た。
アレンの部屋の方をチラリと見れば、ドアの前にネロはいない。
多分、彼はもう起きてどこか別の場所にいるはず。
執務室で政務でもしているのだろうか?
王太子ってもっと威張って、お気楽に生きているのかと思えば、アレンは違う。
国王の代わりに政務もやって、夜はサイモンと一緒に城の周囲を見回ったりして、全力でパルクレールの人々を守っている。
ひとりでなんでも背負っちゃうような人だから、頭痛持ちになるんだわ。
人間は神じゃない。
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