香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「なにをしている!早く!」
動かない私に痺れを切らし、ルーカスは強引に私の手を掴んで引き上げた。
「足元気をつけて」
窓から外に出たまではいいが、足場はほとんどなく、五センチほどの板があるだけ。
ルーカスに支えられながら板に足をつくが、もう周囲は火の海になっていて、皮膚が焦げそうだった。
ルーカスの部下らしき男も私の後から脱出する。
ここにははしごもなければ、階段もない。
しかも、周りの建物も燃えていて飛び移れなかった。
八方塞りだ。
それに、こんなドレスを着ていたら、すぐに火が燃え移ってしまう。
あー、ジーンズとかだったらもっと機敏に動けるのに。
私、異世界でも若くして死ぬ運命なのかな?
焼け死ぬなんて嫌!
火を見て恐怖に震えていたら、アレンが私に向かって叫んだ。
「クルミ、飛び下りろ!」
この火の中を飛び下りるなんて無理だよ。
それに……私を助けたら、あなたはエマ王女と結婚できないのよ。
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