ライラック
1.波斯菊(ハルシャギク)



カラカラと開けた教室の引き戸を、
僕は閉めることなく、中に入った。

3月。卒業式。終業式。
4月。始業式。入学式。

人間はこうして、出会いと別れを繰り返すものなのだと僕は軽率ながら思う。

「よう、柊真!また同じクラスか!
よろしくな!」

横を通った隙に声をかけてきた
同じクラスの相澤 楓。

いかにもパリピです、この人生という物語の主人公です、みたいな名前をしているが、
実際、身長は180cmほどで、顔も整っていて、体つきもよく、俺から見ても悔しいがかっこいいと思ってしまう。
そんな楓はやはり陽キャと呼ばれるグループに属していて、女の子には恵まれているらしい。

こんな完璧と幼なじみとか、本当に悔しいばかりである。


「よろしく。」


僕は軽く返事をして、席に着く。
何故だろうか。
小さい頃から同じように、育ってきたはずなのに。
特に楓とは小中、と同じ学校に通い、同じ野球のクラブに入っていたのに。

楓はクラスの中心的存在。
それに比べ僕はクラスの日陰で生きている人間。

あぁ、どこで間違えたのだろうか、
と僕はため息を零す。

最低限の報復にも、
僕はこいつには絶対に、頼まれても宿題だけは見せてやらない、と決めていた。


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