ただ愛されたいだけなのに
先生の後ろ姿にみとれながら、思いを巡らす。真剣な瞳、マウスを転がす男らしい手、カールさせたおしゃれな髪、フワッと香るフランスパンの香り……癇癪持ち、対人恐怖症……えっ、ちょっと待って。
それなら、クリスマスの約束を破った理由は、本当はわたしを喜ばせるためのサプライズなんかじゃなくて、癇癪持ちの、自称対人恐怖症だったから? 自分に自信がない、自信をつけてから会いたいだなんて……もういい。考えても無駄だ。こんなことを考えても、同じ疑問が湧き上がってくるだけ。
授業中にうちこんだ練習問題を、放課後先生にみてもらう。日課になりつつあるこの行動が、いつか実ればいいんだけど。
先生の手がマウスを転がす。
「申し分ありません。他に何か問題を解きましたか?」
先生はほほ笑んで、中腰になった。
「あ、いえ……あの、これだけなんですけど……」
わたしはどもりながら必死に頭を回転させた。せっかくのチャンスを棒に振ることはできない。
「あの、でも、ここがちょっと分からなくて……」
本当は分かってる範囲をわざと間違えておいた。それくらいの余裕はある。
先生はご丁寧に説明を始めた。
「ここはコツがいるんですよ。まず……」
喉の動きまで分かる距離に先生がいる。
「ここをダブルクリックしてから……」髭を剃った跡まで見える。「そしてここを選択して、完成です」