ただ愛されたいだけなのに


 休み時間に入り、何もすることがないわたしは、スマホをいじって過ごした。お昼はいつもとはちょっと違って、楽しみがあった。

 夢 :わたしは斎藤夢です☺︎
    好きなように呼んでください
 健一:かわいい名前☺︎今日はどんな格好してる
    の?
 夢 :普通にショーパンにカーディガンです(笑)
 健一:見たいなぁ(笑)

「アハハッ。やだーもう」
 わたしは口を閉じて辺りを見回した。危ない、危ない。独り言のボリュームが大きすぎた。健一さんって、ちょっぴり変態? でも男ってそんなもんでしょ。

 夢 :見るほどの物ではないですよ(笑)

 スマホをズボンのポケットにつっこんで教室に戻った。

 退屈な授業、退屈なパソコン、退屈な生徒、退屈な先生——。

「はい、では時間なので、今日の授業は終わりです」先生が告げた。

 生徒がバラバラに動き出し、居残りをする者もいれば、即効で教室を出て行く生徒もいる。わたしはそのどちらでもないノロノロと帰宅の準備をする一人。いつもなら、後者なんだけど——。


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