ただ愛されたいだけなのに


「おはようございます。目黒です」
 おおっと、パーマ頭のイケメン登場。この人が講師? サイコー。
「自分はパソコンの授業をするので、皆さんとはほぼ毎日顔を合わせることになると思います。よろしくお願いいたします」

 外見年齢二十代後半。ほんとのところはわからないけど、これでもわたし、二十代とは何度か付き合ったことがある。んー、まぁ正確に言うと二人だっけ。見たところ、敵はなしね。年寄りばっかりだし。
 連絡一つよこさない根暗の彼氏はいるけど……。それにしても、あのバカはなに考えてるの? 正直言って、見損なった。こんなことは今に限ったことじゃないけど、今日から訓練が始まるってことはあいつも知ってるのに。昨日から行ってらっしゃいの一言も言ってこないなんて、たいしたやつ。

「それじゃあ、みんなが早く慣れるように、一人ずつ自己紹介をしていきましょう」と偉そうな横川が言う。
 はーーー? 人前になんて立ちたくない‼︎ 小学校じゃあるまいし……。

 自己紹介の内容は、名前と年齢と趣味と特技と意気込みを言えとのこと。意気込み? かっこいい講師をものにしますとでも言ってやろうかしら。

「斎藤夢です。十九歳です。趣味は……えっと……」
 趣味? わたしに趣味なんてあったっけ?
「音楽を聴くことで、特技は、特にありません。えーっと……意気込み、は……パソコンを使えるようになりたい、です」

 わたし、あがり症なのかも。


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