この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 おいで、と言外に座っていたソファーの隣を軽く叩くルーカス。ティーナは勧められた通りに大人しく座る。

 幾らか言葉で吐き出したお陰で、ティーナは先程よりは落ち着きを取り戻していた。


「まあ、こんなに身近な所でティーナが怒っていて、アリサが僕達の存在に気付かない事はないだろうから、僕達と会えない場所に居るんだろう。そもそも王城にはいないかもしれない可能性も少しあるけれど」

「それならわたくしから会いに行くわ」

「王城の南に膨大な魔力を感じるんだ。目に見てる訳じゃないけれど、多分結界だと思う」

「流石だわ、ルーカス」


 ティーナの言葉にルーカスは口元を上げる。得意気に、というよりは皮肉気に微笑んだ。


「王族だからね。力のある者が上に立つのはいつの世でも同じだ。魔法の扱いには長けてる」


 一つ息を吸って、ルーカスは笑みを悪戯っぽく変える。


「小細工なら任せて。バレないように結界を解除するよ」

「頼もしいわ。わたくしはこっそりアリサに会いに行くわ」

「頼んだよ。それは君の役目だからね」
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