この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ルーカス殿下。

 アリサ・セシリア・キルシュライトの婚約者だった人だ。


「今夜も歓迎のパーティーありがとうございます」


 穏やかな口調。優しげな笑み。
 でも、その裏に怒りが隠されている。

 見た目は全く敵意なんて感じない。むしろ友好的ですらある。どう見ても優男のような雰囲気だ。

 国王様とローデリヒさんとにこやかに話すルーカス殿下。国王様とローデリヒさんも快く応じている。

 なんで。なんで、そんなにローデリヒさん達を敵視するの?
 ローデリヒさんにとっては、奥さんの元婚約者に会うのはあまり気持ちのいい事ではないのは分かる。

 ルーカス殿下がローデリヒさん達を嫌う理由が分からない。アルヴォネンの王太子妃がローデリヒさん達を敵視する理由が分からない。


 ――この男さえ、いなければ。

 ――この男さえ、いなければ。


 重なるアルヴォネンの王太子夫妻の感情。
 私はただ、困惑するしかなかった。
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