この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「何故……、知っている?」

「あ、教えたの、ワシ」


 自然と声が低くなったローデリヒに、国王が軽く答える。深刻さが全くない国王の様子にローデリヒは脱力した。色々と言いたいことはある。……あるが、知られている以上、もう取り返しはつかない。


「そうですか……」


 一気に疲れた顔をしたローデリヒは、そのまま立ち上がってフラフラと控え室から出て行く。
 部屋の外で待機していたらしいイーヴォが、開いた扉の隙間から見えたので、国王はひとまず忠実な従者に息子を任せることとした。

 ハイデマリーが座っているソファーの背もたれに手を回した国王は、もたれかかってくるハイデマリーに問うた。


「そういえばこの前、アリサと会ったそうじゃな」

「ええ」

「どうじゃったか?」


 ハイデマリーはしばし口元に手を当てて考え込む。唇に引かれた赤い口紅が弧を描いた。


「そうですわね……。いい意味でも悪い意味でも真っ直ぐだと思いましたわ。実直なローデリヒ殿下とも性格的な相性は良さそうですし、流石アルヴォネン王国の公爵令嬢という所でしょうか、魔力も充分で妊娠中に魔力不足になる事がない。本人自身にわたくしは不満はありませんわ。可愛らしいもの。
 ただ……、王太子妃として良いかと問われると難しいところですわね」

「そうなのか?」

「ええ。王太子妃の一番の仕事である後継者作りは達成していても、全く表に姿を表さないですし。最低限の危機管理能力は持っているようですけれど、読心能力が無ければ、すぐに悪い大人に騙されてしまいそうですわ」


 そして、ハイデマリーは続けた。
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