この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ずいっとローデリヒ様に迫る。今度は私が寝転んでいるローデリヒ様を見下ろすと、「あ、ああ……」と気圧されたように頷く。


「……心配、したのか」

「当たり前じゃないですか」


 当然のことを何を言っているのだと思いながら、返事をする。ローデリヒ様は突然胸を抑えた。


「……また胸が痛い」

「え?!大丈夫……じゃないですよね?!ジギスムントさん呼び……」


 立ち上がろうすると、腕を引かれて「大丈夫だ」とローデリヒ様に止められる。


「私の薬は危ない物ではない。誤解するな」

「いや、いやいやいや」


 一体何飲んだか聞くのが怖いな本当に。


「ジギスムントさーん!!」


 ローデリヒ様が止めるのを遮って、扉の外にいるであろうジギスムントさんを呼んだ。やはり待機していたらしくて、ノックの後に入ってくる。ローデリヒ様付きの近衛騎士のイーヴォも入ってきて、扉付近に待機した。


「おやおや、目覚められましたかな?」


 ニコニコと害のなさそうな穏やかな微笑みと共に、ジギスムントさんはベッドの傍に椅子を持ってきて腰を下ろした。私も座っていた椅子に戻る。ローデリヒ様はまだ私の腕を掴んだままだ。


「体調に変化はありますかな?」

「……何故か体が熱い。あと寝てしまう前に吐き気がして、戻した」

「なるほど……」
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