この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「ーーああ、間違いない。私の子だ」


 彼は張り詰めていた息を吐くように、口元を緩める。
 穏やかな海の色の瞳は優しげに細められていて、まだまだ若いはずなのに父親のような顔をしていた。


「お腹に手を当てたら分かるんですか?」

「ああ。直接触れなければいけないが、私は魔力を感じ取れるから、魔力で大体誰の子か分かるんだ」


 魔力……、未知の世界だ……。

 というか、ローデリヒさん王太子様だから跡継ぎとか必要なんだよね……?
 じゃあ、今私のお腹にいる子供が跡継ぎになっちゃったりする感じ?

 駄目だ。責任重大すぎる。
 はやくただの女子高生に戻りたい。



 その晩、友達と学校の廊下を走って、数学の先生に一緒に怒られる夢を見た。
 彼らを呼びたいのに、どうしても友達と数学の先生の名前が出てこなくて、悲しくて、悔しくて、ほんのちょっと涙が出た。
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