この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 眉を下げたべティーナ。ローデリヒはむくれたようにやや口を尖らせた。


「悔しかったので……」


 そんな可愛らしい我が子の反応に、国王は苦笑いをする。


「まあ、まだ体が出来てないから仕方ない。……それと、べティーナ。今日は体の調子は良いのか?」

「はい。今日は元気なの」


 べティーナは儚げな微笑みを浮かべて、首を縦にゆっくりと振った。彼女は一応貴族の縁者とはいえ、ほとんど平民のように暮らしてきた。

 本流の貴族のような魔力量は持っておらず、妊娠時にかなり体に負担を掛けてしまっている。それはローデリヒが六歳になった今でも治っていない。
 おそらくは一生良くなる事は無いだろう、というのが宮廷医の見立てだ。

 そんな彼女から産まれた子供も虚弱体質で、まともな魔法の才能も無いだろうと言われてきたらしい。
 しかし、幸いな事にローデリヒ自身は健康体であり、かなり魔力を持っている可能性があると言われている。

 母の為だった。
 まだ出来ない魔法の練習の代わりに、剣を取ったのは。
 一度後宮から出ればべティーナへの風当たりが強いことを知っていたから。
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