この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「貴女が殿下を可愛がっているのは分かっているわ」

「元々陛下には私の子供が王位に着くことは難しいだろう、と言われていたんです。だから、何も問題はないじゃないですか」

「それは産まれる子が虚弱体質だと言われたからよ。でも、殿下は元気だわ」

「何かの拍子に急に倒れるかもしれないです」


 ハイデマリーは深々と溜め息をついた。過保護すぎだわ、と呆れた声音で説得を諦めたようだった。


「ローデリヒ殿下、どうされたんですか?」


 すぐ側で呼び掛けられてローデリヒの肩がはねる。いつの間にか近くに侍女がいたらしい。慌てて侍女の袖を掴んで、引っ張る。その場からやや遠くまで離れて、ローデリヒは焦りながら侍女に声を掛けた。


「な、何?」

「あ……、あのダンスの講師の方が来られたのでご報告に参りました」

「ああ……。ありがとう」


 そういえば母親が言っていた、とローデリヒはぼんやり思い出す。


「盗み聞きしてたことは内緒にしてて!」
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